ピアノ独奏&指揮 小栗克裕
アンハード・オブ・シンフォニア

ここは、私の演奏によるリアルタイム録音で、ショパンのピアノ協奏曲第1番全楽章です。このデータはピアノソロ部分だけでなく、管弦楽の各パートすべてがリアルタイム録音によります。

さてこの作品は、あまりに有名な曲なので今さら説明するまでもありませんが、私の演奏解釈では、皆さんが聞き慣れた演奏とは多少違いがあると思います。まず1楽章では、管弦楽の前奏部分において、ピアノが登場してから演奏するロマン派的ショパン的音楽の原型がここにあり、しかもドイツ古典派の土台をきちんと持っていて、ベートーベンの交響曲的発想から生まれているのです。ですからたいへん重厚な音楽を表現しています。またピアノの部分とは相反した音楽作りになりました。また、展開部はテーマの動機が管弦楽で次々と演奏されており(残念ながら、オーケストレーションがひどくて鳴りが悪いので、ほとんどの人はピアノパートの華麗な動きしか聞いていない)、それを強調する結果、ピアノパートに至るまでたいへん重厚に演奏してみました。管弦楽パートが伴奏にまわったときに、なんらかの音楽を主張している部分と言ったら、この展開部くらいしかありませんから、特に管弦楽に出てくるテーマの動機を前奏のように重厚に強調したわけです。ですから、普段の演奏ではテンポアップされる展開部のクライマックスは、ブラームスの作品のように重く、しかもテンポもアップしていかないものとなっています。

また、3楽章のトランペットパートが従来の演奏とは違い楽譜の指示を忠実に守った高さになってます。相当高い音になるので(上のHの音が連発します)、かん高く響いて目立ちます。私自身この高さでの演奏を耳にしたのは、つい最近のアシュケナージ/ピアノ&指揮/の録音によるものが初めてでした。E管のトランペットが本来長3度上を実音とすることを、ショパンが間違えて短6度が実音と思っていれば、現在の多くの演奏通りになるわけです。さて皆さんはこのかん高いトランペットをどう思われますか?